この記事の要約
- 外注単価は「自分のスキル」ではなく、発注側がいくらで受注しているかで決まります。
- 制作会社が外注に出せるのは、受注額の30〜50%が目安です。それ以上は出せません。
- だから「相手がいくらで受けたか」を知ると、適正額が見えます。聞いても失礼にはなりません。
- 単価が上がるのは技術が高いときではなく、発注側の手間が減ったときです。
- 買い叩かれる人には共通点があります。金額を後から言う、範囲を決めない、質問しない。
- 値上げを切り出すなら継続案件の切れ目です。案件の途中は最悪のタイミングです。
- 安すぎる仕事は、受けた時点でその金額が自分の基準になります。そこが最大の危険です。
結論:単価は自分ではなく、発注側の受注額で決まります
「自分の単価が安すぎるのか、妥当なのか分からない」
フリーランスの方から、よくうかがう悩みです。
結論からお伝えします。外注単価を決めているのは、あなたのスキルではありません。発注側がその案件をいくらで受注したか。ほぼそれだけです。
どれだけ技術が高くても、相手が30万円で受けた案件から20万円を出すことはできません。逆に、100万円で受注した案件なら、同じ作業に40万円を出せることもあります。
つまり「相手の懐事情を知ること」が、値付けの出発点になります。
私は札幌でWEB制作をしている個人事業者です。制作会社でディレクションをし、広告代理店でクライアントワークをし、事業会社の経営企画では外注先を管理する側にいました。いまは自分でも制作パートナーを探しています。
発注する側と、される側。両方を経験してきました。この記事では、発注側から見た単価の実態を書きます。
発注側は、受注額をどう配分しているのか
まず、お金の流れを把握してください。ここが分かると、交渉の材料が見えてきます。
外注に出せるのは、受注額の30〜50%です
制作会社が100万円でサイト制作を受注したとします。その内訳は、おおよそこうなります。
| 項目 | 目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 外注費 | 30〜50万円 | デザイン、コーディング、撮影など |
| 社内工数 | 20〜30万円 | 営業、ディレクション、進行管理 |
| 粗利 | 20〜40万円 | 会社の利益、固定費の回収 |
外注に回せるのは、多くても半分です。これを超えると、その案件は赤字になります。
「もっと出してほしい」と言いたくなる気持ちは分かります。しかし出せないものは出せません。ここで粘っても、次から声がかからなくなるだけです。
だから「いくらで受けたか」を聞いてください
意外に思われるかもしれませんが、これは聞いていい質問です。
「差し支えなければ、全体のご予算感をうかがえますか」
この一言で、適正額の見当がつきます。答えてくれない会社もありますが、答えてくれる会社のほうが多いです。そして答えてくれる会社のほうが、たいてい良い取引先になります。
金額を隠す会社は、内訳を知られたくない理由があることが多いです。それも判断材料になります。
直接請けと下請けでは、単価が倍違います
同じ作業でも、エンドクライアントから直接受けるか、制作会社を経由するかで、金額はまったく違います。
LPを1本作る場合を例にします。
- 直接請け……20万〜40万円。ただし営業、要件整理、原稿の催促、修正対応、請求まで全部自分
- 制作会社経由……6万〜15万円。作業に集中できるが、単価は下がる
どちらが良いという話ではありません。直接請けの単価が高いのは、その分の手間を引き受けているからです。
「下請けは安い」と嘆く前に、その差額が何の対価なのかを理解しておくと、判断を誤りません。
職種別の目安
制作会社経由の場合の、おおよその水準です。地域や案件規模で上下しますので、幅としてご覧ください。
WEBデザイン
- トップページのデザイン……3万〜8万円
- 下層ページのデザイン……8千〜2万円/ページ
- LPのデザイン……3万〜10万円
- バナー……3千〜1万円/点
コーディング
- トップページ……2万〜5万円
- 下層ページ……8千〜1万5千円/ページ
- LP(1ページ完結)……2万5千〜6万円
- WordPress実装……3万〜10万円
ライティング
- SEO記事……文字単価1〜5円、または1本1万5千〜5万円
- サイト原稿……1万〜3万円/ページ
- 取材記事……3万〜8万円/本
これらはあくまで目安です。この数字を根拠に交渉するのは危険です。相手の受注額が低ければ、この幅の下限すら出せません。
単価が上がるのは、技術が高いときではありません
ここが最も誤解されている点です。
発注する側にいたとき、私が単価を上げていたのは、技術が高い人ではなく、こちらの手間が減る人でした。
手間が減る人とは
- 指示の抜けを、先に質問してくれる……後から手戻りが起きない
- 納期より少し早く出してくれる……確認の時間が取れる
- 崩れがない状態で納品してくれる……こちらでチェックする手間が減る
- 遅れそうなときに、事前に言ってくれる……お客様への調整ができる
- 「こうしたほうが良いのでは」と提案してくれる……考える手間が減る
この5つが揃っている方には、多少高くてもお願いしたくなります。探し直す手間のほうが高くつくからです。
逆に、技術が高くても単価が上がらない人
技術は申し分ないのに、単価を上げにくい人もいます。
- 返信が遅い。数日空くことがある
- 納品物に崩れがあり、毎回こちらで指摘が必要
- 指示にないことは一切しない。抜けがあっても放置する
- 遅れの連絡が、納期当日か過ぎてから来る
この状態だと、単価を上げるどころか、次に声をかけるかどうかを考え始めます。技術の高さは、それだけでは決め手になりません。
「安い人」ではなく「面倒でない人」を探しています
発注する側は、実はそれほど金額だけを見ていません。
安く受けてくれる人を探すより、安心して任せられる人を確保するほうが、結果として得だからです。探し直す手間、やり取りの手間、手戻りの手間。これらは全部コストです。
1万円安い人に頼んで3時間余計にかかるなら、高いほうにお願いします。時間はお金より戻ってきません。
ですから、値下げで勝負するのはおすすめしません。値下げで取った仕事は、値下げで失います。
買い叩かれる人の共通点
単価が上がらない、あるいは下げられてしまう。そういう方には、いくつか共通点があります。
1. 金額を後から言う
「まず内容をうかがってから」と言って、作業内容を全部聞いたあとに金額を出す。これは不利になります。
相手はすでに「この人にお願いする前提」で話しています。ここで想定より高い金額が出ると、値切られるか、範囲を削られます。
最初のやり取りで、おおよその水準を伝えてください。「このくらいの規模ですと、◯万円前後になることが多いです」で十分です。
2. 作業範囲を決めない
いちばん多い失敗です。
「修正は何回まで」「素材はどちらが用意するか」「公開後の対応は含むか」。これを決めずに始めると、作業だけが増えて金額は変わりません。
最初に一文添えるだけで防げます。
修正は2回まで、それ以降は別途お見積りとさせていただきます。
素材(写真・原稿)はご支給いただく前提です。
3. 質問をしない
質問が少ない人は、丁寧に見えて、実は不安に思われています。
「本当に理解しているのだろうか」「後で大きな手戻りが出ないだろうか」。発注側は、そこを心配しています。
最初に3つでも質問があると、それだけで安心されます。そして質問の中身から、経験値も伝わります。
4. 安く受けてしまう
これが最も危険です。
実績が欲しくて、相場より安く受ける。よくある判断です。しかし、一度受けた金額は、その相手との基準になります。
次から「前回は5万円でしたよね」と言われます。値上げには、必ず理由の説明が要ります。
安く受けるなら、期限を決めてください。「最初の3件まで」「今年いっぱい」。区切りがないと、その単価から抜け出せなくなります。
単価を上げる交渉は、いつ、どう切り出すか
タイミングは「案件の切れ目」です
案件の途中で切り出すのは最悪です。相手は逃げられない状態で言われたと感じます。信頼を失います。
正しいのは、ひとつの案件が終わり、次の相談が来たときです。
言い方は、理由とセットで
「単価を上げてください」だけでは通りません。相手も社内で説明する必要があります。説明できる材料を渡してください。
いつもありがとうございます。
次回のご依頼から、単価のご相談をさせていただけないでしょうか。
前回までの案件では、当初の想定より修正のやり取りが多く発生しておりました。
そのぶんを含めて、1ページあたり◯円でお願いできますと幸いです。
難しいようでしたら、修正回数に上限を設けさせていただく形でも構いません。
ここでの要点は「代案を出している」ことです。値上げが無理なら範囲を狭める。この二択にすると、相手は判断しやすくなります。
断られたときの考え方
断られることもあります。相手の受注額が上がっていなければ、出せないのは当然です。
そのときは取引を続けるかどうかを、自分で決めてください。続けるなら、その単価で納得したということです。以後、不満を持ちながら作業するのがいちばんよくありません。
よくあるご質問
相場より安い依頼が来ました。受けるべきですか
判断材料は3つです。実績として公開できるか。継続の見込みがあるか。今、手が空いているか。
3つとも当てはまるなら、受ける意味はあります。ひとつも当てはまらないなら、断ったほうがいいです。
見積りを出すと、いつも高いと言われます
金額そのものより、内訳が見えていない可能性があります。
「一式30万円」ではなく、「トップページのデザイン8万円、下層5ページ×2万円、コーディング一式12万円」と分けてください。何にいくらかかっているかが見えると、判断されやすくなります。
最初の1社目は、どうやって単価を決めればいいですか
実績がない段階では、相手の提示額を受けるしかない場面が多いです。それは仕方ありません。
ただし「◯件まで」と自分の中で区切ってください。そして、その案件は必ず実績として残る形にしてください。掲載可否は最初に確認します。
時給制と案件単位、どちらがいいですか
案件単位をおすすめします。時給制は、作業が早いほど収入が下がる仕組みだからです。
ただし、要件が固まっていない案件や、修正が読めない運用業務では、時給制のほうが安全なこともあります。
値上げを言ったら、切られませんか
切られることもあります。ただ、言わずに続けても、単価は絶対に上がりません。
相手にとって、あなたを探し直すのも手間です。仕事の質に問題がなければ、簡単には切りません。切られるとしたら、それは元々そういう関係だったということです。
まとめ
外注単価について、お伝えしたことを整理します。
- 単価を決めているのは自分のスキルではなく、発注側の受注額です
- 外注に回せるのは受注額の30〜50%。それ以上は出せません
- だから「いくらで受けたか」を聞いてください。失礼にはなりません
- 直接請けと下請けの差額は、営業と管理の手間の対価です
- 単価が上がるのは技術が高いときではなく、相手の手間が減ったときです
- 買い叩かれる人は、金額を後から言い、範囲を決めず、質問しません
- 安く受けるなら期限を決めてください。その金額が基準になります
- 値上げは案件の切れ目に、理由と代案をセットで
発注する側にいて感じていたのは、金額の話を最初にしてくれる人ほど、長く続くということでした。
お金の話を後回しにするのは、相手を気遣っているつもりで、実はお互いを苦しくします。先に決めておけば、あとは制作に集中できます。
なお、私自身も制作パートナーの方を探しています。ご興味がありましたら制作パートナー募集のページもご覧ください。金額は必ず先にご提示し、着手後に減らすことはしません。この記事に書いたことを、自分でも守るつもりです。
この記事の情報について
この記事は2026年1月時点の内容です。金額の目安は、私が発注する側と受注する側の双方で扱ってきた水準と、一般に公開されている相場をもとにした概算です。
案件の規模、地域、取引の経緯によって大きく変動します。実際の交渉では、目の前の相手の事情を確認したうえでご判断ください。
