この記事の要約
- 修正が終わらない原因は、相手がわがままだからではありません。何を1回と数えるかを決めていないからです。
- 線引きの基準は「修正か、追加か」。決めたものを直すのが修正、決めていなかったものを足すのが追加です。
- 断るときは「できません」ではなく金額を出してください。判断が相手に渡り、角が立ちません。
- 工程を戻す変更は、必ず別料金です。コーディング後のデザイン変更は、修正ではなくやり直しです。
- 修正が増える最大の原因は確認者が途中で増えること。着手前に「最終的に誰が決めるか」を聞いてください。
- 無料で対応すべき修正もあります。自分のミスと、伝え漏れです。ここを渋ると信頼を失います。
結論:もめているのは、数え方です
修正が終わらない。何度直しても次が来る。金額は変わらないのに作業だけ増えていく。
この状況になったとき、相手を責めても解決しません。多くの場合、相手に悪意はないからです。
原因ははっきりしています。
何を1回の修正と数えるのかを、決めていなかった。
「修正2回まで」と伝えていても足りません。相手は思いついた順に指摘を送ってきます。1通ずつ届く指摘を、こちらは1回と数えていない。相手も数えていない。そこがずれています。
私は札幌でWEB制作をしている個人事業者です。制作会社と広告代理店でクライアントワークを担当し、いまは発注する側にも回っています。両方の立場から、線引きの実務を書きます。
修正と追加を、分けてください
これがすべての土台です。
- 修正……最初に決めた内容の、精度を上げる作業
- 追加……最初に決めていなかったものを、足す作業
例で見ます。
修正にあたるもの
- 「見出しの文字が小さいので大きくしてほしい」
- 「この写真を、別の写真に差し替えてほしい」
- 「ボタンの色を、もう少し濃くしてほしい」
- 「文言の言い回しを変えてほしい」
いずれも、決めた枠の中での調整です。回数内で対応します。
追加にあたるもの
- 「やっぱりページを1つ増やしたい」
- 「お問い合わせフォームも付けてほしい」
- 「スマートフォン用のデザインも別に作ってほしい」
- 「ロゴも作ってもらえますか」
- 「原稿もお願いできますか」
これらは、回数の中には入りません。別途の見積りです。
境界が曖昧なものもあります。判断に迷ったら、「これは最初の見積りの根拠に入っていたか」で考えてください。入っていなければ追加です。
「1回」の数え方を、先に決める
見積書か、最初のやり取りに次の一文を入れてください。
・修正はデザイン確定までに2回までとし、以降は別途お見積りとさせていただきます。
・いただいたご指摘をまとめて対応する単位を、修正1回と数えます。
・お手数ですが、ご指摘は一度におまとめのうえお送りください。
3行目が効きます。「まとめて送ってください」と先に言っておくと、バラバラに届く量が実際に減ります。
相手も、悪気があって小出しにしているわけではありません。まとめる必要があると知らないだけです。
回数は2〜3回が目安
1回では足りず、5回では多すぎます。デザイン段階で2回、コーディング後に1回。この形が現実的です。
そして、回数を使い切ったことを、その都度伝えてください。
今回の修正で、お見積りに含まれる2回分となります。
これ以降のご修正は別途お見積りとなりますので、この段階でご確認いただく点がございましたら、まとめてお知らせください。
黙って対応してから請求すると、確実にもめます。先に言えば、もめません。
工程を戻す変更は、別料金です
ここは、はっきり線を引いてください。
コーディングが終わった後で「やっぱりデザインを変えたい」と言われる。これは修正ではありません。やり直しです。
相手には、この構造が見えていません。「文字の位置を少し動かすだけ」に見えています。実際には、デザインを直し、コーディングを直し、スマートフォン表示も直すことになります。
だから、説明が必要です。
こちらのご変更は、デザイン工程まで戻す作業となります。
デザインの修正に加えて、コーディングとスマートフォン表示の調整が発生するため、別途◯円のお見積りとさせてください。
納期も◯日ほど後ろにずれる見込みです。
金額と納期の両方を伝えるのが要点です。納期が動くと分かると、相手が自分で判断を変えることがあります。
だから、工程ごとに確定を取る
予防策はこれです。各工程の終わりに、必ず確定の合意を取ってください。
こちらの内容でデザインを確定とさせていただき、コーディング作業に進みます。
コーディング着手後のデザイン変更は別途お見積りとなりますので、この段階でご確認をお願いいたします。
「この後は有料になります」と先に言うことが、相手のためにもなります。言われていれば、真剣に確認します。
断り方:「できません」ではなく、金額を出す
範囲外の依頼を断るのは、気が重いものです。関係を壊したくない気持ちも分かります。
断らなくて構いません。金額を出してください。
お問い合わせフォームの設置は、当初のお見積りには含まれておりませんでした。
追加で対応する場合、30,000円・作業日数3日ほどで承れます。
いかがいたしましょうか。
この形の利点は3つあります。
- 断っていないので、角が立ちません
- 判断が相手に渡ります……やるかやらないかを決めるのは相手です
- 相手が引き下がっても、こちらは悪者になりません
実際には、金額を見て「今回は見送ります」となることが多いです。それでいいのです。無料でやるべきだったものが、無料ではなかったと伝わっています。
言いにくいときの言い方
それでも切り出しにくいときは、責任を書面に預けてください。
お見積りの範囲を確認いたしましたところ、こちらの作業は含まれておりませんでした。
「自分が断っている」ではなく「見積書がそうなっている」という形にします。これだけで、ずいぶん言いやすくなります。
見積書の書き方はこちらの記事に詳しく書きました。
無料で対応すべき修正もあります
線引きの話をしてきましたが、ここを渋ると一気に信頼を失います。
1. 自分のミス
誤字、リンク切れ、支給された原稿と違う文言。これは回数に数えてはいけません。
数えようとすると、相手は「ミスを直すのにお金を取るのか」と感じます。当然です。
2. 伝え漏れによるずれ
こちらが確認すべきだったことを聞いていなかった。その結果、想定と違うものができた。
これも、こちら側の問題として対応してください。「聞かれなかったから」は通りません。聞くのはこちらの仕事です。
3. 明らかな不備
スマートフォンで崩れている、表示が遅すぎる、特定のブラウザで動かない。
これは修正ではなく、納品が完了していない状態です。回数には数えません。
修正が増える、本当の原因
実務で最も多いのは、これです。
途中で、確認する人が増える。
担当者と進めていたのに、社長が見て意見を出す。次に営業部長が見て、また別の意見を出す。それぞれの意見が食い違っていることさえあります。
こうなると、回数の話では収まりません。予防するしかありません。
着手前に、必ず聞いてください
進めるにあたって確認させてください。
・デザインを最終的にご判断されるのは、どなたになりますでしょうか
・社内でご確認される方は、他にいらっしゃいますか
・その方にも、初稿の段階でご確認いただくことは可能でしょうか
3つ目が重要です。決裁者を早い段階で巻き込めれば、後からの大きな差し戻しが激減します。
この確認は、着手前に決めるべきことのひとつです。他の項目はこちらの記事にまとめました。
よくあるご質問
すでに回数を超えて、無料で対応し続けています
次の1回で区切ってください。
「これまでのご修正は対応させていただきましたが、当初のお見積り分を超えております。今回のご対応をもって、以降は別途お見積りとさせてください」
過去の分を請求する必要はありません。これから先の線を引くだけで十分です。
「前回は無料でやってくれた」と言われました
これが、無料で対応し続けることの代償です。
「前回はサービスとして対応させていただきました。今回は作業量が大きいため、お見積りをご提示させてください」
そして、次回からは最初に線を引いてください。同じ状況が繰り返されます。
制作会社を通した案件で、エンドクライアントから直接修正が来ます
これは危険な状態です。窓口を制作会社に一本化してください。
「恐れ入りますが、ご要望は◯◯様(制作会社)を通していただけますでしょうか」
直接受けると、範囲も回数も管理できなくなります。そして、その責任はこちらに来ます。
納品後の修正は、どこまで対応すべきですか
期間を先に決めてください。「納品後2週間以内の不具合は無償で対応します」。
不具合と、内容の変更を分けるのが要点です。表示の崩れは無償、文言の差し替えは有償。この線が自然です。
修正の指示が曖昧で、何を直せばいいか分かりません
推測で直さないでください。ずれた修正は、回数を1回消費するだけです。
「もう少し明るく、とのことですが、次のどちらに近いイメージでしょうか」と選択肢を出してください。相手も、言葉にできていないだけのことがあります。
まとめ
修正が終わらない原因は、相手ではありません。数え方を決めていないことです。
- 修正と追加を分ける……決めたものを直すのが修正、決めていなかったものを足すのが追加
- 「1回」の定義を書く……まとめて対応する単位を1回と数える
- 工程を戻す変更は別料金……金額と納期の両方を伝える
- 断らずに金額を出す……判断は相手に渡す
- 自分のミスと伝え漏れは無料……ここを渋ると信頼を失う
- 着手前に決裁者を確認する……修正が増える最大の原因は、確認者が後から増えること
線を引くことは、冷たいことではありません。むしろ、最後まで気持ちよく進めるための準備です。
範囲が曖昧なまま進んだ案件は、途中からお互いが我慢し合う関係になります。それでは次の仕事につながりません。
なお、私も制作パートナーの方を探しています。ご興味がありましたら制作パートナー募集のページをご覧ください。
この記事の情報について
この記事は2026年2月時点の内容です。制作の実務にもとづく個人的な見解を含みます。
修正回数の考え方は、案件の規模や取引先によって異なります。契約書に定めがある場合は、そちらが優先されます。個別の法的判断が必要な場合は、弁護士やフリーランス・トラブル110番などの公的な窓口にご相談ください。